★WINTER WONDERLAND★
洋楽、映画、読書、国際分散投資、そして心穏やかなシンプルライフ。 (新規の記事追加は http://ww.blog2.fc2.com/ で行っています)
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Let's Groove 2004 -The DISCO- @ 東京国際フォーラム (19 May 2004)
2004年12月05日 (日) * 編集
国際フォーラムを巨大ディスコにしちゃえ!という強引な企画。「椅子席のホールでそんなの無理だよね」と割り切って出かける自分のようなオーディエンスはいいんだけど、「当時バリバリに踊ってました」的な元ディスコクイーン/キングが結構いて、通路脇とかで細々とステップを踏んでいたのがちょっと可哀想でした。とにかく、Shalamar / James "J.T." Taylor (ex-Kool & The Gang) / CHIC という超大御所3組を揃えての企画ということで、ディスコサウンド大好きな自分もかなりわくわくしながら会場に向かいました。



【Shalamar】

70年代の終わりから80年代前半にかけて Solar レーベルを本拠地にヒットを量産した男性2人+女性1人のグループです。1984年のヒット曲は "FOOTLOOSE" サントラ収録の "Dancing In The Sheets"。現在のラインナップには歌姫の Jody Watley が欠けています。ソロに転向した彼女、実はすれ違いで今年の3月にモーション・ブルー・ヨコハマで来日公演を行っていたんですよね。時期が重なっていたら飛び入りしてくれたかもしれないのになあ。

…なーんて不満は軽く吹っ飛びましたよ、Howard Hewett が一声発した瞬間に。この人はマジで上手いシンガーですねえ。よく伸びる声、しかも驚異的に制御されていて。ダンスミュージックでは技巧なんて必要ないと思いがちですが、こういうビートの利いた音楽でこそ歌の上手さが際立つもの。他のメンバーはオリジナルの Jeffrey Daniels と新加入女性の Carolyn Griffy。2人とも息の合ったステップを踏んで踊りながら、要所要所で的確なハーモニーをつけてくれます。

出番が30分しかないので、最初から最後までヒット曲メドレーで飛ばしまくり。
"The Second Time Around"
"Make That Move"
"Take That To The Bank"
などで大いに盛り上げたところで、ラストの曲になって初めて Carolyn がリードヴォーカルをとる場面が来ました。しっとりと静かに歌い出した彼女、みずみずしくも力のこもった声で好感度アップ。しかもそのメロディというのが "A Night To Remember" じゃないですか! この曲大好きなんですよ〜。

途中からバンド演奏が加わって一気に場内ディスコ大会に。Howard Hewett とのヴォーカルの掛け合いが本当にカッコいい。あちらでは懐メロ系のクラブなどをサーキットしているのでしょうが、一度は一世を風靡した彼らだけあって、米国エンターテインメント界のレベルの高さを見せつけてくれるライヴになりました。最後はもうこっちも思いきり歌いまくりです。

後から知ったところでは、実は Shalamar としては初来日だったんだそうです。これは本当に貴重なものを観てしまった。次回はぜひフルセットで観たいなあ。



【James "J.T." Taylor】

Kool & The Gang といえば、1969年から1987年までの間に実に33曲もの全米HOT100ヒットを積み重ねた超大物です。初期の垢抜けないファンクバンド時代もカッコいいのですが、大ブレイクするためには "J.T." というシンガーが必要でした。僕にとってのリアルタイム初のヒットは1984年に全米2位まで上がった "Joanna"。これを含め8曲連続で全米Top20に送り込む黄金時代のスタートです。

この日の45分のステージも、ほぼ完全に Kool & The Gang 時代の大ヒット曲メドレーでした。いきなり1曲目が "Misled" というちょっと難しい選曲。しかも本人+4人の女性ダンサーが全員仮面をつけて登場し、非常に芝居がかった振り付けで踊りながら歌うので、国際フォーラムの観客もちょっと引いていたようです。が、その後はヒット曲連発の楽しいライヴに切り替わって一安心。

彼も完璧なヴォーカルでびっくりです。プロなんだから当然といえば当然ですが、しっかりトレーニングしているんでしょうね。メタル系のライヴなど観に行くと、ヴォーカルの調子が悪くてがっかりすることがありますけど、この違いは一体何なんだ。J.T. はこれに加えてものすごい運動量。バックダンサーたちと一緒に、振り付けをこなしながら全曲相当なダンスをこなしていきます。決して若くないはずですが、鍛え上げられた身体で手抜きなしのライヴを見せるプロ魂に感動。

歌ったのは "Ladies Night", "Get Down On It", "Let's Go Dancin' (Ooh La, La, La)", "Fresh", "Joanna", "Cherish" など。特に後者2曲は全米2位の大ヒットですが、彼らしい甘いヴォーカルを堪能することができました。彼の表情や歌からにじみ出る優しさみたいなものがすごく感じられる曲だと思います。

ラストはもちろん、1981年全米1位の代表曲 "Celebration"! こういう問答無用の大クラシックを持っている人は本当に強いですね。ホール全体で大合唱、大ジャンプ大会になりました。CDに向かい合って聴くとちょっと気恥ずかしい曲ですが、祭りの場ではこれほど盛り上げてくれるアッパーな曲はないでしょう。今後もずっと聴き継がれ、プレイされ続けるクラシックナンバーを生で体験できて本当に気持ちよかった。



【CHIC】

今回のメンツの中で唯一1984年のヒットがないグループですが、そうはいっても Nile Rodgers はこの時期プロデュース等で大忙し、ぱっと思いつくだけで Madonna, David Bowie, The Honeydrippers, Inxs, Duran Duran, Diana Ross その他のヒット曲を手がけていました。「10年先までスケジュールが埋まっている」はずだったのですが、あの頃の勢いはどこに…。

まあそんなわけで、ここは割り切って過去のヒット曲を楽しむのが正解なのでしょうけれど、Nile の衰えは結構キツかったです。ギターといい間延びしたMCといい、ついでに決して上手いとはいえないフロントの女の子2人も、全体にテンションを下げてしまっていたような。ステージ上の人数が多すぎて、ツインドラムにツインキーボード、ツインヴォーカル、サックス、トランペット、ベースに加えて Nile のギターです。せっかくの Omar Hakim のドラムスも、周りのボリュームに負けるまじと大音量で叩きまくりすぎて、個人的にはちょっと醒めちゃいました。

見どころはこれまで制作等で関わった曲を逆カヴァーするコーナーで、Diana Ross の "Upside Down" や "I'm Coming Out"(Omar Hakim のイントロ最高!)など、これは結構楽しませてくれました。

一応トリということで楽しみにしていたのですが、全体としてはちょっと期待はずれだったかな? Nile Rodgers が全盛期を過ぎてしまったのはほぼ間違いと思いますが、一世を風靡した独特のカッティングのリズムギターを生で聴けたのでよしとしましょう。元気なうちにぜひもう一花咲かせてほしいものです。
The Pretenders @ 渋谷公会堂 (4/Feb/2004)
2004年11月27日 (土) * 編集
Loose Screw彼らとの出会いは83年始めにヒットした "Back On The Chain Gang" をベストヒットUSAで見た時に遡りますが、より印象に残っているのは83年暮れからの一連のヒット、"Middle of The Road"(US#19/84), "Show Me"(US#28/84) といった曲たちの方です。つまり僕にとっては1984年もの。

82年、84年、87年、2003年に続く5回目の来日となるようですが、初めて生で見たクリッシー・ハインドはやはりカッコいい姐御でした。「姐御」と表記するのがこれほど似合う女性もそうはいないでしょう。久しぶりの新作 "LOOSE SCREW" に伴うツアーでしたが、新曲と過去の代表曲を満遍なく取り混ぜて、しかも全体として違和感のない構成に仕立て上げていたのは流石。

テレキャスターでガシガシにリズムを刻みながら、時に男勝りに、時にぐっと優しく包み込むようなあの声で歌います。シンプルなんだけど、ひどくシャープな切れ味のロック。見所はたくさんあって、たとえば Princess Princess の「ダイアモンド」の元ネタとして知られる "Don't Get Me Wrong" とか、彼女らにしてみれば最大限にコマーシャルな "I'll Stand By You" も悪くはなかったけれど、やっぱり個人的には1stアンコール2曲目の "Middle of The Road"(邦題『情熱のロックン・ロード』)でした。

この曲の前にドラマー(笑わせるキャラ!)のソロパートがあるのですが、スティックを投げたり口に含んだ水を噴き出したりとかなりウケをとった後で、例のイントロのドラムパターンが始まった時には興奮したの何のって。ロック史上最もカッコいいドラム乱れ打ち系イントロと名付けたいくらい。クリッシーのブルース・ハープソロもばっちり決まります。

ちょっと涙腺に来てしまったのは2回目のアンコールラストに演奏された "Brass In Pocket" でした。大好きな曲なんだけれど、まさかこれを最後に持ってくるとは思わなかった(前日の公演では演奏していない)ので、驚きと嬉しさがごっちゃになってしまって。クリッシー自身にとっても思い入れのある曲なんだと思います。

"Gonna use my arms, gonna use my legs..." と身体の各部を取り上げるコーラスは、ステージ上でそれぞれを使った動作をして見せながら歌いかける姿が可愛らしくも、カッコよくもあり。とっくに50代にさしかかった女性なのは間違いないのに、年齢なんかちっとも感じさせません。確固たる自分のスタイルを持って、シンプルに突き詰めるという、僕の理想の生き方を、ものすごく高いレベルで実現していたのがこの夜のクリッシー姐御なのでした。The Kinks のレイ・デイヴィスの元奥さんであり、Simple Minds のジム・カーの元奥さんでもある彼女が、そういう人生の甘いも酸いも噛み分けた的な年季というか、いい感じに研ぎ澄まされたロック魂みたいなものを見せてつけてくれたライヴだったと思います。

ついでに書いておくと、僕の2列前くらいにいた女の子、歳は30代後半くらいだろうと思うけれど、彼女は本当に熱烈な Pretenders ファンのようで、1曲1曲ほとんど泣きそうになりながら声援を送る姿がとても印象的でした。彼女に限らず、渋谷公会堂を埋め尽くした観客のほとんどがバンド初期からの極めて熱心なファンだったようですが、会場全体が彼らの暖かいオーラで包まれていたことを特筆しておきたいと思います。何度か書いたような気がしますが、良いコンサートは演奏者だけで成立するのではありません。そこに良き聴き手が存在してこそなのだと、つくづくそう思いました。



【The Pretenders セットリスト】
1. Lie To Me
2. Message of Love
3. Talk of The Town
4. You Know Who Your Friends Are
5. No Guarantee
6. Kid
7. Up The Neck
8. My Baby
9. Hollywood Perfume
10. The Losing
11. Hymn To Her
12. Don't Get Me Wrong
13. Back On The Chain Gang
14. Fools Must Die
15. Rebel Rock Me
16. Night In My Veins
17. Precious

-1st Encore-
18. I'll Stand By You
19. Middle of The Road

-2nd Encore-
20. Mystery Achievement
21. Brass In Pocket
David Lee Roth @ 渋谷公会堂 (30/Jan/2004)
2004年11月23日 (火) * 編集
さて、今年に入ってからずっと忙しくて、観に行ったコンサートのレビューを1つも書くことができませんでした。書こう書こうと思いながら、もう年末が近づいています。

振り返ってみて気づいたのは、ほとんどのアーティストが1984年にヒット曲を出しているということでした。自分などはつい昨日のように中学2年生だったあの頃を思い出すわけですが、冷静に考えてみるとそれは何と20年も前のことで、まだ生まれていないとか、その頃の記憶なんてないという世代が台頭しているわけです。いずれにしても単なる偶然とは思えないこの「1984年つながり」は、僕自身が無意識のうちに「あの時代」に強く拘束されていることの証明なのかもしれません。決して多くはないけれど、今年観たライヴについていくつかメモしておこうと思います。

まずは1月30日の David Lee Roth から。


Diamond Dave
"1984" という覚えやすいタイトルのアルバムでその年を席巻した Van Halen には、びっくりするなという方が無理でした。リアルタイムで彼らを初めて体験した "Jump" のビデオで、ニコニコしながらシンセサイザーと高速ギターソロを弾きまくる Eddie Van Halen と、誰がどう見ても馬鹿キャラ丸出しの Diamond Dave。中学1年生の自分にとってはあまりにも刺激的なアメリカンHRとの出会いでした。久々の新作、その名も "DIAMOND DAVE" の発表に伴うツアーだけれど、あの頃の輝きがないのは分かっていますし、ひょっとすると声が全然出ないかもしれない。でもどうしてもこの目で見ておきたかったのです。

結論としては、かなり楽しめるライヴだったと思います。渋谷公会堂の小さなステージに、マーシャルのアンプをあれだけ無駄に多く並べた時点で勝負あり。馬鹿は丸出しにしてこそ意味がある。もちろん Dave は20年分歳をとっているし、明らかに髪も少なくなっているけれど、声は思ったより良く出ていて、何よりトレードマークの回転ジャンプを惜しみなく披露してくれます。といっても滞空時間は短いし、地表すれすれの回し蹴りって感じなんだけどね。

1曲目からいきなり "Hot For Teacher" が炸裂して会場はパーティモードに突入。その後も "Just Like Paradise", "Running With The Devil", "And The Cradle Will Rock" などの名曲を惜しげもなく繰り出します。"You Really Got Me" はジャズっぽいアレンジで全然姿を変えていました。無理にいじらなくてもいいのにね〜。

さらに "Just A Gigolo - Ain't Got Nobody", "California Girls", "Unchained"(会場内のヴォルテージ上がりまくり!), "Goin' Crazy", "Panama", "Dance The Night Away", "Yankee Rose" とヒット曲が続きます。その間にちょこちょこと新曲が挟まっているのだけれど、正直言って出来は凡庸だし、それならグレイテスト・ヒッツ選曲に絞った方がよかったんじゃないかな?とも思います。

今回感心したのはバックバンドの演奏で、見たところ結構若者たちなのですが、なかなかタイトでしっかりしたプレイが印象に残りました。ベーシストは日本人だったようです。若くて元気なメンバーたちに担がれて、Dave のヴォーカルも冴えていたのかもしれません。

アンコールは Dave 自身がスティールギターのソロを弾き、さらにアコギに持ち替えてのブルーズっぽい曲から。ギターを弾けること自体知らなかったので新鮮です。最後はお約束ともいえる "Ain't Talkin' Bout Love" から "Jump" へ。会場全体が跳ねまくり、2時間に及ぶ長丁場のライヴは幕を閉じたのでした。観てよかったと素直に思えるショウでした。
Lee Ritenour, Larry Carlton & The Sapphire Blues Band, Spyro Gyra @ 東京国際フォーラム
2003年12月17日 (水) * 編集
2003年12月17日(水)、東京国際フォーラムホールCにて「音祭@フォーラム」というイベントを観てきた。出演者は、70〜80年代のAOR/クロスオーバーシーンを席巻したリー・リトナー、ラリー・カールトンの2大ギタリストに、ベテランフュージョンバンド、スパイロ・ジャイラ。当時あのジャンルをよく聴いていた人たちにとっては夢のような豪華競演といえるだろう。

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★Spyro Gyra
 いつかいいベスト盤を見つけたら買おうと思っているうちに、先にライヴを観ることになってしまった。曲としては "Morning Dance"くらいしか知らなかったが、実に楽しめる演奏だった。何といっても中心メンバーのジェイ・ベッケンスタインのサックスが素晴らしい。足で大きくリズムを取りながら、滑らかにファンキーにブロウしまくり。無駄な力が入ってなくて、それでいてメロディとテクのツボがしっかり押さえてあるまさしく名人芸。他のメンバーも技巧派ばかりで、ギタリストもキーボーディストも絶妙のソロを展開してくれる。ベーシストは黒人のスコット・アンブッシュ、彼のソロパートでの目にも止まらぬ高速チョッパーにはびっくりした。

 見せ場のひとつはジェイのダブル・サックスソロ。何とアルトとテナーの2本を同時に口に加え、それぞれ右手・左手で弾きながら絶妙に3度でハモる長いソロを吹いてくれる。よっぽど練習しているのだろうが、あんな演奏する人は初めて見た。口が疲れるだろうなあ…。ジェイは Dream Theater の名曲 "Another Day" でソプラノ・サックスを吹いていることで知られる。ご存知のとおり Dream Theater はプログレッシヴ・メタルと呼ばれるジャンルのバンドで、ライヴでは同曲のソロはやむを得ずキーボードで代用されるのだが、毎回「なんか違うな〜」と思わずにいられないのだ。ジェイの生演奏を聴いて納得した。これを鍵盤で置き換えること自体に無理がある。

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★Larry Carlton & The Sapphire Blues Band
 個人的にはラリー・カールトンはスティーリー・ダンでのプレイが印象的だ。AOR/フュージョンの代名詞的なギターを聴かせてくれた彼に期待したところは大きかったのだが、今回の公演は上記のとおりホーンセクションを入れたバンドによるブルース解釈的なものになった。もちろんカールトンのギターは彼の音以外の何物でもなかったし、タメて後ろに乗っけるブルースのノリが絶妙すぎて一音ごとにぶっ倒れそうになったのも事実なのだけれど、やっぱりちょっと違ったのだ、僕が聴きたかったラリー・カールトンとは。彼にしてみれば毎回同じような来日公演じゃ飽きる、今回は趣味のブルースで…という感じなのだろうけれど、僕は直球勝負のフュージョンセットでも全然構わなかっただけに、やや不完全燃焼だった。だってブルースなんてどれを聴いても同じに聞こえるんだもの(禁句)。

 ラリー自身はジーンズに白いスニーカーでひょこひょこ歩いてくれて、とても気さくなおじさんって感じだった。それでいてソロを弾き始めると火を噴くような熱いフレーズが飛び出してくるのだから不思議。見るからに本当に「いい人」なんだろうなあって感じた。どうしてって? 人は見かけによるのだ。間違いない。

***

★Lee Ritenour
 カールトンが趣味に走ったと書いたけれど、リトナーのセットもある意味趣味の世界だった。ここ数年リリースしているアントニオ・カルロス・ジョビンやボブ・マーリー、モータウンのカヴァーアルバムから多数選曲して、無名の若者ヴォーカリストを引っ張り出して歌わせたり。リトナー本人は楽しそうだったからいいけど、こちらはちょっとだけ眠くなってしまった(イベントが19時から始まってもう22時近かったのだ)。それでもリトナーのトーンは本当にリトナーで、目をつぶって聴いているとこれまでいろいろなアルバムで聴いたことのある「あの音」そのものなのだった。

 リー・リトナーのギターの特徴は「決して熱くならない」ことだと思う。どんなに速いフレーズを弾きこなしていても、常に冷静でひんやりした演奏であり、その点でカールトンとは決定的に異なる。2人がそれぞれ Fourplay の初代及び2代目ギタリストというのも不思議な話だ。到底置き換え不可能なギタリストでありながら入れ替わってしまった。いろいろな意味でこの世界を引っ張ってきた両巨頭だからこそ、そのスタイルの違いも含めて多くのファンに愛され、受け入れられたってことなのだろう。リトナーの「体温を感じさせない」ソロを堪能したあと、アンコールのジャムセッションではラリー・カールトンとスパイロ・ジャイラのジェイ・ベッケンスタインが加わった。ラリー&リーの奇跡的なソロ合戦など、楽しそうに演奏するベテランたちの表情を目に焼き付け、僕は演奏時間3時間半を超えた会場をあとにしたのだった。
 
 今回のイベントはJ-WAVE絡みの企画のようで、各出演者の出番の前にはDJのルーシー・ケントがステージに出てきてアーティスト紹介などの原稿を読んでくれたが、個人的には邪魔に思われた。そもそもこのライヴを観に来た人たちで、ラリー・カールトンがどのようなギタリストであるか知らない人などいる訳がないのだ。「さあ、それでは盛り上がっていきましょう!」などと拍手を強制されるのも興醒めだった。彼女も仕事でやむを得ずやらされているのだろうし、ルーシーさん自体はとても好きなDJなので、複雑な気分にさせられる演出だった。もっとも、僕の席の後ろにいた学生らしき女の子などは「リー・リトナーなんて名前聞いたことない」などと語っていたので、全く無駄ではなかったのかもしれない。

全般的な感想として、この種の安定したフュージョンをホール会場で楽しむのは難しいように思われた。ロックのようにダイナミックでなく、ジャズのようにスリリングでもない。どこか予定調和を感じずにいられないその音楽は、大きなハコよりは小さなライヴハウスで楽しみたいし、さもなければドライヴや家事のBGMとして流す時の方がずっと活き活きして聞こえるのは気のせいだろうか。
21st Century Schizoid Band @ 新宿厚生年金会館
2003年11月13日 (木) * 編集
2003年11月13日(木)、新宿厚生年金会館。

2002年の来日は当日まで冗談だと思っていたし(だから見損ねた)、2年連続で来日することも何だか冗談みたいだったのだけれど、ずいぶん経ってからファミリーマートのチケットぴあ端末で購入してみたら10列目中央の席が取れたので出かけてみることにしました。という程度の期待度だったのですが、結果としては「観ておいて本当に良かった」。素直にそう思えました。

実際、オーディエンスも多くはなかったのです。2階席はほぼ閉鎖され、1階席も半分くらいしか埋まっていない。一方で、詰めかけたほとんどは40代にピークがある少数精鋭のプログレオヤジたちなので、逆に異様なテンションを感じてしまったりも。僕の後ろの席の人なんて、ヴォーカル曲を最初から最後まで大声で歌ってくれてちょっと迷惑。

さてご存知のとおりこのバンドはかつて King Crimson に在籍したメンバーたちが集結して、懐かしいクリムゾン楽曲を中心に演奏してくれるという企画。唯一クリムゾン在籍者でないのがギター兼ヴォーカルの Jakko Jakszyk で、チラシでは「元Level 42」ということになってますが、むしろカンタベリー人脈で語ってあげるべきでしょうね。無理やりファミリー・ツリーにぶら下げるなら、KCオリジナル・ドラマーのマイケル・ジャイルスの娘婿ということになります。

ジャッコ以外のメンバーは昨年と同じ Peter Giles (Bass)、Ian McDonald (Sax, etc.)、Mel Collins (Sax, etc.) プラス、マイケル・ジャイルスに代わってドラムを叩く Ian Wallace。イアン・ウォーレスとメルはあの "ISLANDS" を録音したメンバーということになります。人生長生きしてりゃ凄いものが観られるってもんですな。

オープニングはKCの2nd『ポセイドンのめざめ』にも別名で収録されていた "A Man, A City"。いきなりイアン・マクドナルドとメル・コリンズがサックスで強烈なユニゾン・リフを吹いてくれます。ジャッコは高音方面に良く伸びるヴォーカル、ピーターは一人白いスーツで淡々と指弾き、そして注目のイアン・ウォーレスは…。

う〜ん、どうももたつき気味なドラムス。一瞬「この人大丈夫かな」とか思いましたが、曲が進むにつれて次第にグルーヴが出てきました。スロースターターなのかな。個人的にはメル・コリンズの格好よさに釘付けになってしまい、この夜のほとんどを彼の方を見ながら過ごすことになってしまいました。

初めてメルのサックスを聴いたのはいつのことだろう。恐らく Alan Parsons Project の "Don't Answer Me" あたりではないかと思うのですが、豪快で覚えやすいメロディにすっかり参ってしまいました。トニー・レヴィン並に膨大なセッション参加をこなしている彼とはその後もあちこちでぶつかることになり、Tears For Fears "SONGS FROM THE BIG CHAIR" や Dire Straits "BROTHERS IN ARMS"、Uriah Heep "RETURN TO FANTASY" や Wang Chung "POINTS ON THE CURVE" など、気がつくと僕の周りはメルのサックスだらけに。

Terence Trent D'Arby 衝撃の1st中 "Dance Little Sister" でカッコいいブロウを聴かせていたのも彼だし、Tina Turner の "PRIVATE DANCER" タイトル曲で感動的なソロを吹いていたのも彼です。Go West の1stにもクレジットがあったような気がするし、何と Milli Vanilli のアルバムにまで彼の名が明記されているのです。名誉なことかどうかはともかく。

そんなメル・コリンズに真にスポットが当たるのはライヴの後半で、それまではKCの2nd及び3rdの曲を中心に進行します。あまり聴いた回数が多くない時期なので思い入れも少ないのですが、こうして生で聴いてみるとちゃんと曲展開を覚えている自分にちょっと感動。このメンバーだからこそ演奏できるアルバムですし、今になって聴き返してみるとなかなか悪くない。ライヴでは "Cadence And Cascade" の前にメル/ジャッコ/イアン・マクドナルドが揃ってフルートを三重奏してくれました。しーんと静まり返った厚生年金会館に響き渡る3本のフルート。絵としてもなかなかのものでした。

フルートといえば、やはり "In The Court of The Crimson King" でのイアン・マクドナルドのソロでしょう。「ここは俺に任せろ」と言わんばかりの見せ場、レコードで何度も聴いたあのカウンターメロディが染み渡ったのでした。メロトロンのパートはイアンとメルがシンクロして弾く KORG の Triton というシンセサイザーで再現。これがなかなか良いサンプル音で、二人の両手=4本で音を重ねれば結構な厚みが出ます。

この辺りまで来るとすっかり調子が出てきたイアン・ウォーレス、彼の見せ場は続く "Ladies of The Road" でした。2003年に "ISLANDS" の楽曲を生で聴く機会があるだけでも驚きなのに、何とオリジナルに忠実にサビの部分をイアン・ウォーレスが歌うのです。なかなかしっかりした歌唱でまたびっくり。この曲は恐らく当時のボズ・バレルらの趣味が出たブルーズ・ナンバーなのですが、このバンドでも思いっきり泥っぽくプレイしてくれました。メルのサックスソロが暴走し、ドラムスもパワー倍増で叩きまくりで何だか2人ともヤバい雰囲気。

"ISLANDS" からはこの後 "Formentera Lady" 〜 "Sailor's Tale" という怒涛のメドレーが演奏され、後半ではメルとイアン・ウォーレスが完全にブチ切れて "EARTHBOUND" 状態に。同作はただの音の悪いライヴ盤だと思っている方にこそこの日のライヴを見ていただきたかった。まさに圧巻、要するにこういうことをやりたかったんだ。僕の "ISLANDS" 観はすっかり変わってしまいました。

新曲の "Catley's Ashes" は7拍子のリフを核にしたテクニカルなインストで、メンバー間の緊張感が感じられるいい演奏でした。もうちょっと新曲をやってくれてもいいかな、と思いましたがそこはこのバンド名ですから、本編ラスト3曲は伝説の1stから名曲連発です。まずは『風に語りて』ですが、オープニングのツインフルートでまず悶絶。イアン・マクドナルドに至ってはリードヴォーカルまで歌ってくれます。比較的静かな曲だけに、演奏が乱れたら…と心配しましたが全くの杞憂、後半のフルートソロも完全に独演会にして持っていってしまったイアンなのでした。

ここでジャッコによるメンバー紹介を挟んで『墓碑銘』へ。中学生の頃は歌詞を読みながらしみじみ聴いたものだが、こうして30歳を超えてから聴くと何だか冗談みたいな曲ですね。骨は海にでも流してくれればよいので墓を作る予定はないけれど、万が一墓碑銘が必要となったらやっぱり "Confusion" なんだろうなあ。ジャッコは器用な人ですね。ロバート・フリップのギターをよく再現していると思うし、ヴォーカルも巧い。少なくとも違和感を感じまくって演奏を聴くのに集中できないなんてことが起こらない。声のトーンは Dream Theater の James LaBrie にちょっと似てるかなと思いました。

そしてラストはやはり『21世紀の精神異常者』。全メンバーに過剰なまでの出番が用意されている凄い曲、こんなのがデビュー作の1曲目なんだからねえ。初演から30年以上を経て21世紀に入った今聴いても、相変わらず新鮮で驚かされます。

時折ビル・ブラフォードに似た表情も見せる寡黙な職人風メル・コリンズと、ステップを踏みながら楽しげに吹くイアン・マクドナルドのツイン・サックス。キメの部分がかっちり決まりまくる気持ちよさといったらありません。さらにギター→サックス(メル)→サックス(イアン・マクドナルド)とソロを回しながら、バックではイアン・ウォーレスも軽くドラムソロを見せたりして。オリジナルをそれほどぶっ壊した演奏ではありませんでしたが、このバンドならではの見せ場は十分に盛り込んだアレンジでした。

ファースト・アンコールはついに出た!の "Starless"。ビル・ブラフォードやジョン・ウェットンを欠くこの曲に何の意味があるのかと訝る向きもあるでしょう。でもこのソプラノサックスの悲壮な音色はメル・コリンズにしか出せない。2003年はウェットンの来日公演もあってこの曲もフル演奏したわけですが、とても良かったにも関わらず何かが足りなかった。それはやっぱりメルのサックスだったと思うのです。というわけで同日のジョン・ウェットンのベース音を頭の中で合成しながら聴く "Starless" になったのでした。

ギターソロを受けて繰り出されたイアン・マクドナルドのアルトサックス・ソロも大変なことになっていて、これはやっぱり身震いするほどの曲です。頂点に上り詰めたときの恍惚感は "Fracture" と甲乙付け難いものがありますね。マクドナルドに関して言えば、まさにいぶし銀のマルチプレイヤー。サックス、フルート、キーボード類を取っ換え引っ換えしながら全体に目を配り、実に楽しそうにバンドを統括しているのでした。Foreigner のオリジナルメンバーをこの目で初めて見ることができた、というのも産業ロック好き的には嬉しかったところ。

いったん下がってのセカンド・アンコールの時に、ピーター・ジャイルズが出てこなくてメンバーが焦っていたのが笑えました。一人遅れてのんびりと入場、会場の空気を大いに和ませてくれます。長身で髭を生やした彼は何ていうかこう、英国紳士風なんすよね。我が道を行くというか、マイペースというか。マクドナルドのピアノ・ソロに導かれて演奏されたのは McDonald & Giles の名曲 "Birdman" (の一部)。ゆったりとしたメロディで暖かく展開する楽曲で、この素晴らしいライヴを締め括ってくれたのでした。

約2時間に及ぶコンサート、2nd〜4thを中心とした選曲でしたが、個人的には特に "ISLANDS" の持つ力を激しく再認識させられました。クリムゾンの他のどのアルバムとも共通性がなく、静謐だったりブルージィだったりととっつきにくい作品かもしれませんが、聴き込むと非常にハマる音楽だと思います。

それにしてもこのメンバーたちは演奏巧者ばかり。「キング・クリムゾン卒業生」というブランドが伊達ではないのは百も承知ですが、在籍時代も音楽性もバラバラなメンバーが集まってこれほど楽しめるライヴを観せてくれるとは思いませんでした。要するにみんなとてもオトナ。本人たちがリラックスして楽しみながら、聞き手が求めるクリムゾン像と自分たちにできることのぎりぎりの接点でエンターテインメントに昇華してくれる。ロバート・フリップ個人にそれほどのこだわりを持たない自分のようなリスナーにとっては理想的なクリムゾンOB会なのかもしれません。

願わくばブラフォードやウェットン、ボズ・バレルなどいろいろな旧メンバーがフレキシブルに参加できるような自由な枠組みであってくれますように。


【21st Century Schizoid Band セットリスト】
1. A Man, A City (Picture of The City)
2. Cat Food
3. Let There Be Light
4. Cirkus
5. Flute Trio
6. Cadence And Cascade
7. In The Court Of The Crimson King
8. Ladies Of The Road
9. Catley's Ashes
10. Formentera Lady
11. Sailor's Tale
12. I Talk To The Wind
13. Epitaph
14. 21st Century Schizoid Man

-Encore-
15. Starless

-2nd Encore-
16. Birdman
Linkin Park @ 日本武道館
2003年10月25日 (土) * 編集
メテオラ (通常盤)2003年10月25日(土)、日本武道館。

アリーナ席がオールスタンディングと聞いて急速に見る気を失い、結局直前まで行くかどうか迷っていた公演。結果としてアリーナ最前ブロックで見ることができた訳だが、そのチケット購入については後に記すとして、コンサート自体は非常に満足度の高いものだった。

くすんだ水色の巨大な要塞の如きステージセット。ドラムスは上段にセットされ、左右に突き出た先端にマイク・シノダやチェスター・ベニントンが駆け上って歌うことが出来るように作られている。実際、動けるメンバーはほとんど一時も休むことなくステージ上を駆け回り、満員の武道館の全方向に向かってエネルギーを放射してくれた。

リンキン・パークの演奏を聴くのは初めてだったが、印象を一言で言うなら「再現性の非常に高いライヴ」だったと思う。オリジナルアルバムはわずか2枚だが、米国を中心に相当な数のギグを重ねてきただけあって、演奏が非常にこなれている。アルバムを聴く限りではスタジオで相当整えられたのだろうと思っていたが、これほどまでに再現できるとは正直言って驚いた。マイク・シノダのラップの切れ味と、チェスターのコーラスパートの再現性には舌を巻く。

2人のどちらが欠けてもリンキン・パークの音楽は成立しない。最初の頃はシノダのラップはあくまで付け足しで、チェスターの分かりやすいフックこそがこのバンドの魅力なのだと思っていたのだけれど、リミックスアルバムを経て2nd "METEORA" に至る過程でシノダの存在感がとても大きくなっている。一つひとつの単語を噛み締めるように、非常に安定した、それでいて力強いラップを聴かせてくれるようになった。それはライヴでも十分に感じられる。両腕を広げたり交差させたりしながら身体全体で表現されたライムが僕らに向かって飛んでくるのでとても聴き取りやすい。

一方のチェスターはといえば、小さな身体を文字通り振り絞って絶叫している。額に血管を浮き立たせ、ステージにしゃがみこむようにして一心にフックを歌う姿にはこちらも熱くならずにいられない。いつ倒れるかとハラハラさせられるような絶唱なのに、曲が終わると息も切れていない様子。一体どうなっているんだろう。ラップのバックでチェスターがコーラスを歌い、フックの部分ではシノダが細かくラップを挟む。阿吽の呼吸でぴったり合ったヴォーカルワークを聴かせるフロント2人にはちょっと驚いた。

もうひとつ驚かされたのは熱心なファンたち。ほとんど全曲に渡って武道館の大半の客が一緒に歌っているように感じられた。アリーナ最前ブロックではイントロの1音だけですぐに曲に反応してモッシュが始まるし、ブロック後方で身体を揺らしながら観ている女の子たちはラップ部分も含めて歌詞を口ずさんでいるようだ。そう、女の子が多かったのも印象的だった。

控えめに言っても半分近くは女性だったのではないか。メンバーは全体に小柄でなで肩のごく普通の男の子たちなのだが、逆にそれが親近感や共感を集めているのかもしれない。自分自身はティーン〜20代の女の子たちにこんなに囲まれる機会なんて滅多にないので、汗だくになって飛び跳ねる彼女たちと接触する度にちょっと不思議な感じになった。

ちなみに武道館のスタンディング公演についてちょっとメモしておくと、会場に入る前に広場のテントで荷物を預かってくれる(有料)。多くの子達はここでTシャツ1枚に着替えて乗り込んでいくようだ。手持ちのバッグの類を持ち込むのは賢明でない。どうしても必要ならウェストバッグか、悪くてもたすきがけできるショルダーバッグにすべきだが、理想的なのは手ぶらで入ることだ。入口でチケットをもぎられると引き換えにリストバンドをくれるので、公演中はこれを腕に付けて歩き回る(例えばトイレに行く)ことになる。

さて最後にチケットについて記しておくと、僕が買ったのは公演のわずか2日前だった。既に同日の武道館公演はほとんどソールドアウトとされていたはずだが、帰り道に立ち寄った近所のファミリーマートでチケットぴあの端末機をいじっていたら、何と土曜日公演のS席があると表示されている。慌てて仮予約してみると何とアリーナの最前ブロックなのだった。発券後に念のためもう一度アクセスしてみたが、同日公演はすべて売り切れましたと表示されるばかりだった。早速友人に電話して1枚引き取ってもらうことにしたが、相手にも非常に驚かれた。

実際に会場に出向いてみて感じたのは、アリーナの各ブロックにはそれほど人を詰め込んでいなかったということ。おそらくトラブルを恐れた主催者側が当初かなり制限した枚数で販売したのだろうが、公演が始まってみてある程度安全性が確認できたので、若干枚を追加発売したのではないか。まさに偶然のタイミングで飛び込むことができたのだろう。要するにファミリーマートのぴあ端末も馬鹿にできないということだ。

♪I tried so hard
 And got so far
 But in the end
 It doesn't even matter
 I had to fall
 To lose it all
 But in the end
 It doesn't even matter


一緒に見に行った相手は、かつて僕にリンキン・パークの良さを教えてくれた恩人とも言うべき存在なのだった。2人でほとんどステージ真下から至近距離でバンドを見て、本当にいいライヴだねと語り合った。本編のラスト、壮絶な無常観に貫かれた "In The End" の歌詞を彼女と一緒に合唱しながら、僕は少しだけ涙を流した。


【Linkin Park@武道館 セットリスト】
1. Don't Say
2. Somewhere I Belong
3. Lying From You
4. Papercut
5. Points of Authority
6. Runaway
7. Faint
8. From The Inside
9. Figure .09
10. With You
11. Be Myself
12. Pushing Me Away(Remix)
13. Numb
14. Crawling
15. In The End
-ENCORE-
16. My December
17. A Place For My Head
18. One Step Closer
Candy Dulfer @ ブルーノート東京
2003年10月13日 (月) * 編集
Right in My Soul2003年10月13日、Candy Dulfer のブルーノート東京公演(2ndステージ)を観てきた。

4年ぶりの新作 "RIGHT IN MY SOUL" のツアーだが、今作は「歌」に力を入れたのが特徴だ。これまでもラップ程度のヴォーカルは披露していたが、ほとんどの収録曲で本格的な歌を聴かせるとなると尋常でない。アルバム全体のトーンもこれまでのファンキー路線からややアダルト&クールなクラブサウンドに接近している。自分にとっては初めての生キャンディとなるだけに、期待に多少の不安が入り混じったコンサートになった。

結論から言おう。キャンディ・ダルファーはライヴに限る。

約80分のショウで全8曲。1曲あたり10分近いロングヴァージョンで展開されたステージはやはりファンキーそのものだった。オープニングは Average White Band の全米#1ヒット、"Pick Up The Pieces"。すっかり自分の代表曲にしてしまっているナンバーだが、いきなり派手なソロをぶちかまして満員のブルーノート東京を沸かせてくれる。超ダンサブルなインストだけに早くも場内は手拍子の嵐。

バンドのアンサンブルがまた素晴らしい。キーボードの Thomas Bank は公私ともに良きパートナーだし、ギターの Ulco Bed もデビュー前からの長い付き合いだ。この日特に声援を集めていたのはドラマーの Cyril Directie で、時折任されるドラムソロでは小さめのセットを最大限に活用して叩きまくっていた。

キャンディのアルバムのドラムは大抵打ち込みで、個人的にはそこが唯一の不満なのだが、ライヴでこうして黒人のリズムセクションが入ると曲の表情が全然変わってくる。前のアルバムのツアーは "LIVE IN AMSTERDAM" としてライヴアルバム化されており、生々しい迫力満点の演奏が聴けるので、興味がおありの向きはぜひ。

2曲目は新作からのシングルカット "Finsbury Park, Cafe 67"。キャンディは曲間にマイクを持ってたっぷりMCを入れてくれる。ジョークも満載で思わず笑ってしまうのだけれど、このステージ慣れ具合はたいしたものだ。若い頃からステージに立っていただけあって、場の盛り上げ方や注目の集め方を実に良く知っている。ライヴ時点ではこの曲は全米のスムーズ・ジャズ・チャートで2位まで上昇していた。「もっともっとエアプレイされて1位になってほしいから、みんな応援してね!」という声に大歓声が上がる。

タイトルはロンドンのフィンズベリー・パークから取ったのだろう。軽快で小洒落たインスト・ナンバーで、ライヴで聴いて一発で気に入った。曲の後半では Ulco Bed の火を噴くような凄まじいギターソロが登場する。Ulco のギターはこの夜全体通して非常に光っており、産業ロック的なセンスを感じさせるプレイが随所で聴かれた。なおこの曲は10月後半には全米のスムーズ・ジャズ局で最大のエアプレイを集めてチャートの頂点に立った。日本から遅れること数年、いよいよキャンディは全米を制覇しつつある。

"Freak Out" ですごいサックスソロを聴かせたあとの "What's In Your Head" では「もしよかったらみんな立って踊ってね!」との呼びかけに応えてブルーノート東京がオールスタンディングになってしまう。これらの曲はアルバムではクールさを強調するあまり不完全燃焼の感が強いのだが、ライヴではエネルギー全開のジャズファンクに大変身する。比較するまでもなく、ライヴ版の方が圧倒的に気持ちいい。目の前で小さな身体を折り曲げて力いっぱいアルトサックスをブロウする可愛いキャンディのヴィジュアル分を差し引いても、だ。彼女のサックスにしてもアルバム程度のもんじゃない。もっともっと激しくて、力強くて、グルーヴを感じさせるものだ。彼女の良さはライヴでないと伝えられない。

本編のラストは今や彼女の代名詞になった感のある "Sax-A-Go-Go"。軽く10分を超える長さに引き伸ばされたこの曲で、キャンディはソロを吹きながらステージを降り、そのまま会場の一番後ろを通って場内を一周。通路沿いの席だった僕の目の前50cmくらいのところを通過したキャンディは、思っていたよりずっと小さくて可愛い女性だった。アルトを吹きまくり、時に腰を振って笑顔いっぱいでダンスしつつ再びステージに戻った彼女は完全に全観客の心を鷲掴みにしていた。

アンコールで出てきた彼女は「偉大なサックス・プレイヤー、ジョン・コルトレーンの曲をやります」と言って "Impressions" を吹き始めたが、コルトレーンらしさを感じさせたのは冒頭の1分程度までで、途中からは急速にキャンディ・ダルファー印のダンサブルなファンクにアレンジされ、これまた大盛り上がり大会になってしまった。ここまで徹底して楽しませてくれるとさすがという他ない。

***

ひょっとしてヴォーカル曲ばかりになるのでは…という心配は杞憂に終わった。ハスキーな中音の喉を聴かせてくれたのは全体の4割弱くらいだろうか。だがヴォーカルパートがある曲でも歌い終わるとすぐにサックスに切り替わり、観ている方が熱くなるようなパワフルなブロウを聴かせてくれるので、少しも歌モノ過多という印象はない。むしろ北米市場でのエアプレイ獲得を目指したポジティヴな変化と言えるだろう。これまでのところプラスに作用しているし、1ヵ所に留まらず常に前進しようとする彼女らしさも感じる。僕とほぼ同い年のキャンディ、ますます応援していきたいと思う。

最後にブルーノート東京という会場について一言。珍しく一月に2回も出かけてしまったが、別に極端に好きな会場というわけではない。個人的にはステージ前のテーブル席は苦手だ。ステージに対して正対していないし、二人連れで行くと向かい合わせにされる。両隣が他人という状況で食事をしながらライヴを観るのは決して望ましい環境ではない。ベストと思われる位置は一段上がった後ろの通路沿いの席で、ステージほぼ正面から全体を見渡せる上に、出口のレジもすぐそばだ。

だがブルーノートに関する最大の問題は喫煙が許されていることだろう。禁煙席もあるが席の位置が悪く、オープンスペースで空気が流れてくるので何の意味もない。演奏時間の割に高めのチケット料金であることが多いが、この種のジャズクラブが寡占に近い状態にある限り仕方ないことかもしれない。もう少し気軽に楽しめる会場があると良いのだけれど…。


【セットリスト】
Pick Up The Pieces
Finsbury Park, Cafe 67
Freak Out
What's In Your Head
Let Me Show You
Lost and Gone
Sax-A-Go-Go

-ENCORE-
Impressions
東京スカパラダイスオーケストラ & Chaka Khan @ 日本武道館
2003年10月10日 (金) * 編集
2003年10月10日(金)、日本武道館。

チャカのライヴはとても良かった。

8月末に東京JAZZ2003で観て以来となる短いインターバルだったが、度肝を抜く迫力のヴォーカルは相変わらず。ピチピチの黒のレザーパンツに巨大なお尻を包んで登場した彼女、何と1曲目から "I Feel For You" でぶっ飛ばす。東京JAZZがスタンダード曲中心の選曲だったのに比べ、今回はヒット曲中心に歌い倒すプログラムで、ソロ時代さらには Rufus 時代のヒット曲を中心にほぼベスト選曲といえるだろう。予定されていた "Ain't Nobody" を土壇場でキャンセルし、大好きな "Through The Fire" を歌ってくれなかったのは残念だったが、それでも耳鳴りするほどのチャカの声を堪能できたのは良かった。

個人的に気に入ったのは4曲目の "Until You Come Back To Me"。ご存知アレサ・フランクリンのテイクで有名なスティーヴィー・ワンダー作の楽曲だが、チャカとスティーヴィーは相性がいい。続く Rufus 時代の "Tell Me Something Good" もスティーヴィー作でうまくつなげてあった。"Hollywood" から "Sweet Thing" への流れもメロウで素敵。本編ラストの "My Funny Valentine" は映画『ため息つかせて』のサントラにも収録されているスタンダードだが、すっかり自分の曲にしてしまっているようで、各メンバーを紹介しながらソロをとらせる長尺のヴァージョンになっていた。

そのバックバンドの演奏はあまりこなれていなかったように思えたが、若々しくて好感が持てる。コーラス女性シンガーを4人も連れてきたが、そこまでは必要なかったのではないか。彼女らにソロでスキャットを歌わせてみたら揃いも揃ってチャカのフォロワーだったのにはちょっと笑った。

70年代以降のソウル/R&Bシーンにチャカが与えた影響は僕らの想像を超えている。いわゆるディーヴァ系の女性R&Bシンガーで彼女の影響を受けていない人を探す方が難しいくらいだ。アンコールで歌った "I'm Every Woman" にはホイットニー・ヒューストンによるカヴァーがあって、あれはあれで悪くないのだけれど、こうして本家が腹から声を振り絞ると比較の対象にならない。満面の笑みをたたえて手を振るチャカのまぶしさといったら。

信じられないことに彼女ほどのシンガーが現在はレコード契約すらないのだという。半ば伝説的な存在になりつつあるとはいえまだまだ現役、第一級の声を持つ彼女だけに、ぜひもう一度スポットライトが当たることを期待したい。

***

さて、これはテレビ朝日の開局40周年記念だかのイベントだった。他には Joan Jett & The Blackhearts と矢井田瞳という組み合わせもあった武道館シリーズ。Hanoi Rocks も来てたっけ。結論から言えば、あまりにファン層がかけ離れた無謀なカップリングのライヴはアーティストにとってもオーディエンスにとっても不幸だ。(フェスティヴァルはそもそもごちゃ混ぜなのが魅力なので良しとする)

残念ながら僕は東京スカパラダイスオーケストラの音楽にはほとんど興味がない。たまたまアリーナ席(立見)の最前ブロックのチケットが取れたので、汗だくで暴れるスカパラファンの中でもみくちゃになりながらチャカの出番を待ったが、その1時間の長かったこと。スカパラの愛好者には悪いのだけれどこの程度のバンドならいくらでもいるし、それをメンバーの多さで誤魔化しているような気もする。

ルックスのいいアイドル的人気、というかアイドルそのものだと感じたが、若い子たちにホーンセクションの魅力を教えてくれる存在として機能しているのならばよしとしよう。彼らを見てトロンボーンやサックスを習おうとする若者がどの程度いるのか分からないが、ここを入口に Chicago や Tower of Power も聴いてみようかな、なんてきっかけになってくれればいいんだけど。

スカパラのステージが約1時間で終わった後も、ファンたちはアリーナから去らなかった。きっとチャカが終わった後に再び出てきて、もう1曲くらい演奏してくれると思っていたのだろう。だがチャカの終演後にはあっさり「これで本日の公演はすべて終わりです」という無情なアナウンスとともに客電が点灯したのだった。

主催者側にはガラガラになったアリーナ席をチャカ姉御に見せる勇気がなかったものと見えるが、こんなことなら第1部の後の休憩時間に「スカパラの出番はこれで完全に終わりです。もう出演はありません」とアナウンスしてあげる方がファンたちにとってよっぽど親切だと思う。もちろん、もっと親切なのは無茶なカップリングのイベントにしないことなのだけれど。


【Chaka Khan セットリスト】
1. I Feel For You
2. Whatcha Gonna Do For Me
3. You Got The Love
4. Until You Come Back To Me
5. Tell Me Something Good
6. Hollywood
7. Sweet Thing
8. My Funny Valentine
-ENCORE-
9. I'm Every Woman
The Crusaders @ ブルーノート東京
2003年10月06日 (月) * 編集
Rural Renewal2003年10月6日、The Crusaders のブルーノート東京公演(2ndステージ)を観てきた。

クルセイダーズの復活は昨年のフュージョン界における一大ニュースだった。予想通り今年になってブルーノート東京での来日公演が決定したので、ともかく足を運ぶことにした。何しろ1950年代から活動しているグループなので、自分ももちろん後追いのファンだ。よく耳にしたのは79年のポップな "Street Life" だが、遡るとテキサス出身らしい泥臭いファンク/ジャズを演奏しており、これがますます気に入ったのだった。

今回の再結成にはジョー・サンプル(p, key)、ウィルトン・フェルダー(sax)、スティックス・フーパー(dr)が集まったが、残念ながらウェイン・ヘンダーソン(tb)は参加していない。来日公演は更にフーパーが欠け、セッションドラマーが穴を埋めた。70年代後半にラリー・カールトンが参加して洗練されたプレイを聴かせたギター・パートは、今回はレイ・パーカー・Jr.が代役を務めている。個人的にはレイを至近距離で観ることができるというのも楽しみのひとつだった。

ブルーノート東京特有のアットホームな雰囲気の中で進行したライヴは、さすがにベテランらしい貫禄を感じさせた。代表曲のひとつ "Free As The Wind" で華麗に幕を開け、以後は新作 "RURAL RENEWAL" からの曲とかつてのヒット曲を織り交ぜながら進行する。本物のジョー・サンプルが、目の前で本物のフェンダー・ローズと本物のウーリッツァーを弾いている。本物のウィルトン・フェルダーが本当にあのサックスをブロウしまくっている。それだけで目がつぶれそうな光景だが、サポートメンバーたちも実に堅実な演奏ぶりだ。

いずれも有名なスタジオ・ミュージシャンばかりだが、特筆すべきはトロンボーンのスティーヴ・バクスターだろう。ウェイン・ヘンダーソンの代役は並大抵の仕事ではないはずだが、ほとんどの楽曲で展開されるウィルトン・フェルダーとの長い2管ユニゾンは信じられないほど完璧な精度でぴったりと寄り添い、時に任されるソロパートではダイナミックな構成を一気に吹ききって大きな喝采を浴びていた。

彼に比べると、レイ・パーカーはリズム・ギター仕事が多いせいか地味にも見えたが、正確なピッキングは70年代にボズ・スキャッグスの傑作群で聴かせてくれたとおり。常に後ろからサポートする姿勢が好印象だったが、それも当然だろう。今日の主役はあくまでもウィルトンであり、ジョーなのだから。

そのジョー・サンプルは1曲ごとにマイクを持ってゆったりとしたおしゃべりを聞かせてくれた。再結成して久しぶりのツアーについて、新曲のタイトルの由来、そしてエレクトリック・ピアノとの出会いについて…。

本人は最初エレピが大嫌いだったそうだ。だがある日レイ・チャールズが弾くウーリッツァーの太い音を聴いて感動し、クルセイダーズとしてレコード会社と契約してすぐにそのお金で買いに行ったウーリッツァーが彼の運命を変えたのだという。その門外不出の大切なウーリッツァー(北米大陸から外に出したことがないらしい)を初めて日本に持ってきたんだ、と嬉しそうに語る彼。64歳の大ベテランだが、この時ばかりは子供のような微笑を見せてくれた。もちろんキラキラした柔らかい光の玉を転がすようなフェンダー・ローズの音色も彼のトレードマーク。リチャード・ティー亡き後、エレクトリック・ピアノ・プレイヤーの大御所として今なお君臨するジョーの素晴らしい速弾きも堪能できたのだった。

ライヴならではの見せどころはキャロル・キングのカヴァー "So Far Away"。以前からライヴアルバムで聞かせていたとおり、この曲では後半にウィルトン・フェルダーの超ロングトーンが登場する。バックの演奏が止んで、ワンノートを1分近く長々とブロウし続けるこのパートは観客から大歓声が沸く場面でもある。

ロングトーンはケニーGのライヴでもお馴染みだが、おそらくは吹きながら同時に鼻で息を吸い込む循環呼吸法をマスターしているのだろう。いつまでも続く長い音色への拍手と歓声が頂点に達したところでバックメンバーが加わるのだが、ウィルトン自身はどうってことないよって顔で平然としているところがまたクール。毎晩やってる名人芸なのだろうが、目の前で見せられるとやっぱり凄い。

もうひとつの見せ場はアンコールの最後にやってきた。ジョー・サンプルからの紹介を受けてマイクスタンドの前に立ったレイ・パーカー・Jr. がニコニコしながら語る。「クルセイダーズは高校生の頃によくバンド組んでカバーしてたんだよ。だからこうして今、クルセイダーズと一緒にツアーしてるのが信じられないくらいさ。だって本物のジョー・サンプルに、本物のウィルトン・フェルダーだぜ… ワオ!」。

でも、だからこそ今夜は "Woman Needs Love" も "Ghostbusters" も歌わないよ、というのだ。だってこれはクルセイダーズのステージなんだからと。それは分かる。分かるけど残念だ。だって確かにクルセイダーズを観にきた訳だけれど、レイだって聴きたかったんだから。するとレイはニヤリと笑って言ったのだ。「"Ghostbusters" は歌わないけど、クルセイダーズのステージだから、みんなコーラスで "Cru-saders!!!" って歌ってくれるかな?」「YEEEEAAAHHH!!!!」。

かくしてクルセイダーズ・ヴァージョンの "Ghostbusters" が始まったのだった。信じられない! ウィルトン・フェルダーとスティーヴ・バクスターが2管のホーンであのリフを吹いている! ジョー・サンプルがエレピで伴奏を付けている! そしてレイ・パーカー・Jr.が昔のままの声で歌っている!

♪If there's something strange in your neighborhood
 Who you gonna call?
  (観客)Cru-saders!
 If there's something weird and it don't look good
 Who you gonna call?
  (観客)Cru-saders!


というわけで、和気あいあいの大盛り上がり大会になったのだった。途中で最前列の女の子をステージに上げてマイクでコーラス部分を歌わせるなど、最後に美味しいところをもらった形のレイ・パーカー・Jr.だが、クルセイダーズも成し遂げなかった全米#1ヒット保持者だし、彼目当てで来たファンもいるだろうから当然の扱いだろう。とにかく楽しめる、実に良いコンサートだった。そして自分がこうしたフュージョン/スムーズ・ジャズの音楽がいかに好きかということを再認識する夜にもなった。


【セットリスト】
1. Free As The Wind
2. Shotgun House
3. The Territory
4. Ballad For Joe
5. So Far Away
6. Carnival of The Night
7. X Marks The Spot

-ENCORE-
1. Rural Renewal
2. Ghostbusters
John Wetton @ 渋谷クラブクアトロ
2003年09月23日 (火) * 編集
Rock of Faith2003年9月23日(火)、渋谷クラブクアトロ。
…はあ。こんな夜もある。

1曲目の "Sole Survivor" の歌い出しを聴いた僕は耳を疑った。喉の調子が最悪で、ほとんど声らしい声が出ていない。ジョン・ウェットンともあろう歌い手が正確な音程をヒットすることすらできず、終演まで「聞こえているヴォーカル」と「歌われるべき音程」の差分修正作業に追われるライヴだった。これは極めてストレスフルな事態で、当然のことながら彼のベース演奏にはいささかの問題もなかったことが居心地の悪さに拍車をかけた。僕の見ていた場所の近くでは日本語でJWに罵声を浴びせ続けていたファンもいたくらいだ。

ついでに言えば翌日同じ会場で行われたライヴでは、まるで別人の如く回復した喉で完璧なヴォーカルを聞かせたというのだからショックはより深まった。JWの同一ツアー内でのヴォーカルの出来・不出来の差が激しいという情報を知ったのは帰宅した後のこと。

***

さて、こうした事態はJWに限らず一般的に起こりうる。例えば Dream Theater のヴォーカリスト、James LaBrie も当たると素晴らしいが、風邪などひいて来日すると大変に惨めな声を聴かされることになる一人だ。さしあたっての解決法を考えてみたい。まずは次のようなものになるだろう。

解(1) 「アーティストはプロなのだから、体調管理も仕事のうちだ。お金をもらってライヴをやる以上、常にファンが支払った金額に値する舞台を見せねばならない」

まったくもっておっしゃるとおり。これは正論だ。だが現実世界では正論こそがもっとも弱い。なぜなら人間は時として体調を崩すことが避けられないし、身内の不幸や不可避の事故など体調管理の次元を超えて降りかかる事態を考えると、完全な状態なんていう概念そのものが机上の空論に過ぎない。現に悪いコンディションに陥ったとして、ツアー日程は先に組まれているのだから、とりあえずは来日してリハーサルせざるを得ない。問題は、リハしてみたらとても人様にお見せできる状態ではなかったという場合だ。少なくとも本番前にそう判明したならば、次のような解が考えられるだろう。

解(2) 「とてもお聞かせできる状態ではないので、大変残念ですが公演をキャンセルし、全額払い戻します」

解(3) 「とてもお聞かせできる状態ではありませんが、それでも声を振り絞って歌います。但し、良い状態の時との差額○○○○円については入場時に払い戻しいたします」

解(4) 「とてもお聞かせできる状態ではありませんが、それでも声を振り絞って歌います。但し、公演は無料とし、終演後にもし『よくやった、感動した!』と思っていただけたなら、その気持ちに見合った額を出口にてお支払いください」

読んでのとおり、解(3)(4)は現在の前売りシステムにおいては空論に過ぎない。現実的なのは解(2)だが、ずっと前から楽しみにしてきたファンもいることを思うと、一概にすべてキャンセルせよとは言い切れない面もある。空論に過ぎないとはいえ解(4)には一定の妥当性があるのではないか。結局昔ながらの「大道芸に対する投げ銭システム」がもっとも合理的なのかもしれない、という虚しさが漂うのだった。

***

ジョン・ウェットンの公演に戻ろう。JWの最近の作品をしっかりフォローしていないため、どうしても古い曲の演奏に興味がいってしまうのだが、何と言っても "Starless" をJWのベースで聴くことが出来たのは大収穫だった。バンドが若いこともあり、キング・クリムゾン版の再現にはならないが、苦しいヴォーカルが終わった後のインスト部分からラストにかけての激しいベースプレイには目を見張った。よく考えると "Starless" を生で聴くこと自体初めてだったのだが、JWの素晴らしいベースで聴けたことで喜びは何倍にもなった。

同様に、"In The Dead of Night" も初ライヴ体験だった。ジョン・ベック(Key)をはじめとする若手のバンドの演奏はかなり新鮮で、良い曲がこうして演奏され続けていく姿を眺めること自体、何だか温かい不思議な気持ちにしてくれる。ジョン・ベックに関して言えば時々トランス状態に陥ったかのような妖しい首の揺れを見せながら、的確な指さばきで鍵盤を操っていたのが印象的。

しかし何より強烈だったのはジョン・ウェットン本人の太りようだった。近年の彼の容姿をまったくチェックしていなかったのだが、あれほどまでに腹が出て丸々とした満月のような顔になっているとは思わなかった。正直、「またグレッグ・レイクが代理で来たのかよ」とか思ってしまったくらいだ。もちろんJWの歌やベースには何の関係もないことだけれど。

もうひとつ、クアトロはスタンディングだとばかり思い込んでいたのだが、右手前に若干の椅子席があることを知った。あそこなら例の大きな柱に邪魔されることもなくじっくりステージを見られるね。当然のことながら、席にかけていたのは熱心なファンたちばかりのようだった。比較的新しい楽曲についても覚えやすい良いメロディばかりだった。次回はぜひ良い状態で歌ってほしいものだと思う。

【セットリスト】
1. Mondrago (Gtr, Keys)
2. Sole Survivor
3. In The Dead Of Night
4. Don't Cry
5. Voice Of America
6. A New Day
7. Book Of Saturday
8. The Smile Has Left Your Eyes
9. Walking On Air
10. Who Will Light A Candle?
11. Rendezvous 6.02
12. Take Me To The Waterline
13. After All
14. Starless

-Encore-
15. Red
16. Battle Lines
17. Heat Of The Moment
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