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Inxs @ Fort Canning Park, 17 Aug 2006
2006年08月21日 (月) * 編集
Switchテレビ番組で公募したという新ヴォーカリストをメンバーに加え、新作 "SWITCH" を発表した Inxs の "THE SWITCHED ON TOUR 2006" を観てきた。はっきり言って、期待以上のパフォーマンスで、80年代からのフェイバリット・バンドのひとつをこういう形で見ることができた幸運を噛み締めている。

もちろん僕らの心には今でもマイケル・ハッチェンスの姿が焼きついている。彼のセクシーさ、カリスマぶりを誰かで置き換えるなんてことができるわけはない。その前提条件を差し引いても、大役を任された32歳のカナダ人、J.D. Fortune は十分な「掘り出し物」だろう。

ステージに飛び出した瞬間は背の高さとやけに細身のボディだけが目に付いたが、オープニングの "Suicide Blonde" の歌詞を一声発した瞬間に、自分を含む約5,000人の観客は彼の全てを受け容れる気になったんじゃないかと思う。実に深みのある低音。ダイナミックな抑揚。マイケル・ハッチェンスの声に求めていたものの大半は、見事に再現されている。

声質は確かに相当近いけれども、独自の Fortune 色もしっかり持っている。高い身長と長い手足を駆使し、時にマイクスタンドを大胆に振り回すワイルドなステージ捌きも大したもの。例えるなら平井堅のロック・ヴァージョン的な、実にセクシーな男っぽさを舞台上に漂わせる。単なるマイケルの物真似なんかじゃない。これは大した逸材だ。

新作からの曲と懐かしいヒット曲をほぼ交互に組んだセットリストも正解だった。新曲も粒ぞろいで違和感なく聴ける。でもやはりファンの目当ては "Mystify" や "By My Side" といったヒット曲。"Original Sin" や "Need You Tonight" も劇的に盛り上がったが、個人的には最も好きな "What You Need" で完全に切れ、周りのオーストラリア人たちと全歌詞大合唱。カーク・ペンギリーの伸びやかなサックスソロも素晴らしい。

そのカークをはじめ、オリジナルメンバーたちを確認できたのも嬉しかった。言うまでもなく Inxs はファリス3兄弟のバンドで、特にアンドリューが音楽的な要となっている。彼はブルース・ハープを吹く一方でキーボードを弾き、リズムギターも担当しながらコーラスも入れるという忙しさ。結構太っちゃったけど相変わらず元気そうだった。

ジョン・ファリスのドラムスはテクニック的に特筆すべきものはないのだが、独特のファンキーなビート感がやっぱり Inxs のリズムだなあと思う。共にリズムセクションを担うゲーリー・ビアーズのベースは相変わらず素晴らしかった。グルーヴ感たっぷりに低音のリフを弾きまくる彼の見せ場は、メンバー紹介を交えて10分近く演奏された "Taste It"。カッコよすぎ。

でもってファリス3兄弟の最後、ティム・ファリスは結局サングラスを取ってくれなかったので表情が分からなかったのだけれど、ステージ右端で鉄壁のリズムギターを弾きまくってくれた姿が妙に印象に残った。アンドリューとカークも入れるとギタリスト3人という場面が結構あるのだけれど、2人が表でリズムを刻む裏の拍子を狙ってティムが鋭くピッキングする様子が目の前で見られたのは収穫だった。重層的なリズムギターの構成は彼らのトレードマークでもある。(ちなみに "Devil Inside" の印象的なリフはティムが一人で弾いている。)

セットリストの中で特に嬉しかったのは、アルバム "KICK" のタイトル曲 "Kick" をやってくれたこと。シングルヒットというわけでもないのに会場では大ウケで、ほとんど全部歌っているファンばかりという状態だったのには驚いた。いかに "KICK" がアルバム単位で愛されている作品かということが分かる。

アンコールは3曲。今でもラジオでよくかかるスピーディな代表曲 "New Sensation" と、泣き泣きのブルージーなバラード "Never Tear Us Apart"。大合唱となったこの2曲までは予想通り。でも、ラストに持ってきたナンバーには不覚にもちょっと感極まってしまった。アンドリューのキーボードが懐かしいメロディを奏で始める。

…アルバム "SHABOOH SHOOBAH" から、"Don't Change"。

そして割れるような歓声。もう20年以上前の、決して大ヒットとはいえないこのシングル曲の歌詞に込められたメッセージを、オーディエンスはしっかりと受け止めたことだろう。たとえ新しいヴォーカリストを迎えても、Inxs は何も変わらない。これまでどおりの素敵なロックを演奏し続けるバンドだってこと。

お世辞抜きで素晴らしいライヴ・パフォーマンス。Inxs はやっぱり最高のライヴ・バンドだった。


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